書籍レビュー『発達障害の子に「ちゃんと伝わる」言葉がけ』
尊敬する佐々木正美先生の著書『発達障害の子に「ちゃんと伝わる」言葉がけ』です。困っている子に対する深い愛情のある先生。参考になります、ありがとうございます。これまた、発達障害関係なく育児にとても役立つ内容だと思います。子育てがツライ時、子どもに優しくなれますよ。特に、子どもが幼児期に役立つと思います。(うちの場合は長いこと役立ちそうです)
※「始業式に思う発達凸凹息子の最大の課題:朝の支度ができない。トロい。ルーティンワークができない。」の記事より分割、加筆しました。2019.12/17
内容紹介 :Amazonより
発達障害の子は、目に見えない話し言葉を聞き取るのが苦手です。そのため、言葉で言って聞かせようとしても伝わりにくいことがよくあります。本書では、「朝の支度を次々とこなせない」「食べものの好き嫌いが多い」「何度注意しても同じことをやめない」「口ごたえが多い」など、大人がイライラしがちな発達障害の子の問題行動ごとに、適切・不適切な言葉がけの例を挙げ、どのように言葉をかけたら伝わりやすくなるのか、自尊心を傷つけずに「できる」ことを増やしていけるのか、といった疑問にこたえます。困ったとき参考になる、お母さんの体験談つき。
出典:Amazon
「はじめに」より抜粋
自閉症・発達障害スペクトラムといわれる子どもたちに寄りそう人たちは保護者であれ、教育や療育の専門家であれ、発達障害という問題をもって生まれてきた子どもの特性(障害)を、決して治す(直す)べきものではないということです。治る(直る)という問題ではないのです。
太字は管理人 『発達障害の子に「ちゃんと伝わる」言葉がけ』 3頁
そして、そういう特性をもって生まれてきた子どもたちが、その特性をもったまま健康で幸福に生きていくためには、周囲の人たちからの理解や支援が絶対に必要だということです。
目次
はじめに
1:発達障害の子が、何度言っても「わからない」理由
- 「早くしなさい」「やめなさい」が、まるで効かないのは・・・
- 「できて当たり前」ができないのが発達障害
- まずは、その行動特徴を知っておきましょう
- 人と目を合わせることが苦手
- 目に見えないものに意味を見出すことが苦手
- 新しい変化に対応することが苦手
- こだわりをもちやすい
- 感じ方が過度に敏感だったり、鈍感だったりする
- 不器用さが目立つ
- 「はじめ」と「おわり」を理解することが苦手
- 話を集中して聞くことが苦手
- 人の気持ちや状況を理解して合わせることが苦手
- 何をしていいのかわからない状況に身をおくことが苦手
2:もう叱らなくても大丈夫、「ちゃんと伝わる」言葉がけのルール
- 聞くことが苦手、視覚情報に強い・・・などの特性に寄り添って
- ルール1:話しかけるときは、子どもの視線の中に入って言葉がけを
- ルール2:指示を出すときは、言葉と視覚情報を併用して
- ルール3:注意をするときは、短い言葉で具体的&肯定的に
- ルール4:できたことを認めてあげる言葉がけを
3:日常生活の「できる」がどんどん増える言葉がけ
- 「当たり前のこと」ができるようになると、大きな自信に
- 子どもの「できる」を増やす言葉がけ5箇条
- ぜひ参考にしたい、4人のお母さんの現場からの声
- グズグズ・モタモタに関すること
- ケース1:朝の支度を次々とこなせない
- ケース2:トイレに行こうとしない
- ケース3:なかなか着替えてくれない
- ケース4:食べるのに時間がかかる
- ケース5:簡単にできそうなことができない
- ケース6:手伝ってくれたけれど、結果がイマイチ
- ケース7:宿題をやろうとしない
- ケース8:園や学校へもっていくものを準備してくれない
- ケース9:園や学校に行くのを嫌がる
- しつけ・マナーに関すること
- ケース1:汚い言葉を使う
- ケース2:食べものの好き嫌いが多い
- ケース3:食べる姿勢が悪く、食べものや食器で遊ぶ
- ケース4:遊んだおもちゃを片付けない
- ケース5:玄関に靴を脱ぎ散らかす
- ケース6:並んでいる人の間に割り込もうとする
- ケース7:病院や図書館などで静かにしていられない
- ケース8:何度注意しても同じことをやめない
- 注意・関心の向け方に関すること
- ケース1:目が合わず、呼びかけても無反応
- ケース2:注意散漫で集中して座っていられない
- ケース3:危険な状況でも遊びに夢中
- ケース4:テレビをダラダラ見ていたり、ゲームばかりしている
- ケース5: 絵本の読み聞かせをしても、関心を示さない
- コミュニケーションに関すること
- ケース1:「ありがとう」「ごめんなさい」が言えない
- ケース2:口ごたえが多い
- ケース3:ウソをつく
- ケース4:同じ年ごろの子どもと遊ぼうとしない
- ケース5:友だちに手や足が出てしまう
- ケース6:園や学校からの帰宅後、いつもと様子が違う
- ケース7:理由がわからないけれど泣いている
- ケース8: 甘えて、まとわりついてくる
4:「その子らしさ」を大切にする子育てを
- わかりやすいくて育てやすい発達障害の子どもたち
- よき理解者の存在が必要不可欠
- 園や学校の先生とも上手に連携を
- 障害を伝えるときは、その子の得意なことを強調して伝えて
- 子どもたちが育ちたいように育てる
(付録)「また言ってしまった!」を予防する言葉がけ変換表
感想
朝の支度について
朝の支度をこなすためのツールとして、いわゆるお支度ボードとも言われる、やる項目を絵カードで並べるというものがありますよね。その注意点として、写真などを使う場合、余計なモノがゴチャゴチャ写ってない方が良い、気が散るしどこを見ていいか分からなくなる、という記載が新しい視点でした(68頁)。
あるお母さんの経験談として、「うちの子は文字の方がよく動いてくれた」とありました。息子はひらがなを読むのが大好きだったので、私も文字で試しましたが、イラストの方がよかったようです(本人に聞いたらイラストの方が分かりやすいと言われました)。
同じ支援でも子どもによって、より良いものがあるんですね。きっと、我が子の様子をよく観察して気づけるといいのかな、とそんなことも読んでいて感じました。
できないこと、やりたがらないことは親がやるという割り切り
着替えなど、何が何でも子ども本人にやらせようとすると、どうしても大きな声を出したり、結局、叱ってしまう。でも、私は親に散々怒られて二次障害を発症したと思っていますので、怒りたくないわけです。じゃぁどうするか。この書籍を読んで、親が快く手伝ってあげようと割り切ることができました。もちろん、できない時もあります。
でも、周りの親御さんからしたら「甘いな」「過保護だな」と思われると思うのですが、本人が嫌がったら、楽しく遊びの一貫でやってあげようと。
何歳までこちらが続けてあげられるか分からないですけど、きっと、いつか息子から離れていく(自立していく)と信じています。
改めて読み返して
この記事を書くにあたって、本書をざっと読み返していますが、とても良い本ですね~。小学校にあがって、読むことも減ったと思いましたが、3章の「コミュニケーションに関すること」がまさに役立ちました。年齢や発達段階によって、読むページが変わるのも、子どもの成長を感じられる所です。
一番、感銘を受けた所
4章「「その子らしさ」を大切にする子育てを」の章で、
また、彼らは一度覚えたことはよく守り、まじめに実行しようとします。人にいじわるをするようなこともしません。だから私は、発達障害の子どもというのは、ある意味、とても育てやすい子たちだと思うのです。
・・・省略・・・
親が思うように育てるのではなく、その子のありのままの姿を受け入れて、その子の望んだように育ててあげようという視点や姿勢をもっていれば、もっと子育てがラクになるはずです。
『発達障害の子に「ちゃんと伝わる」言葉がけ』 208頁
発達障害の子どもたちを「育てやすい子どもたち」と表現されているところに感銘を受けました。もしかしたら、我々周囲の世間体とか一般常識とかマジョリティとか集団とか同調圧力とかが、彼らを「育てにくい子」に変えてしまっているのかもしれません。やり方さえ間違えなければ、育てやすい子のままでいられる。やり方を間違えてしまう(親の要望ばかり押し通してしまう)と、彼らはどんどんひねくれていってしまうのではないでしょうか。そして、そうした考え方に私は希望を感じるのです。少なくとも、親の対応を変えれば子も変わる可能性があるわけですからね。
彼らができなかったり、癇癪を起こしたりするには、理由があるとしています。その理由がわかれば寄り添える。でも、実は発達圏内にいる私であっても、理由になかなか気づいてあげられない。難しい。
思うんですけど、
たかだか数年しか生きていない子どもが、「お母さん、僕はここの音が嫌いで不安になって耐えられないんだ。だから癇癪を起こしてしまうんだ」などと説明できるワケもなく。本人だって、はっきりとした理由は分からない。特に、みんなきっと「自分が普通」と思い込んでいる。よもや、他人が違う感覚を持っているなんて、思いもつかない。(私は嗅覚がそうでした。体育館のマットの匂いで死にそうになってた)
と、偉そうに書いてしまいました。すみません。
佐々木正美先生の他の書籍と同様、お薦めですよ!
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません